百人一首について

                   古今集24首
猿丸大夫 おく山に紅葉ふみわけ鳴しかの聲きくときそ秋はかなしき
安倍仲麿 天の原ふりさけみれは春日なる 三笠のやまに出し月かも
喜撰法師 我盧はみやこのたつみしかそ住 よを宇治山と人はいふなり
小野小町 花の色はうつりにけりないたつらに わか身よにふるなかめせしまに
参議篁 和田の原八十嶋かけてこき出ぬと 人にはつけよあまの釣舟
僧正遍昭 天つ風雲のかよひち吹とちよ をとめのすかたしはしとゝめん
河原左大臣 みちのくの忍ふ文字すり誰ゆへに 乱れ初にしわれならなくに
光孝天皇 君かためはるの野に出てわかなつむ わか衣手に雪はふりつゝ
中納言行平 立わかれいなはの山の嶺に生る まつとしきかはいまかへりこん
在原業朝臣       千早振神代もきかす立田川 からくれなゐに水くゝるとは
藤原敏行朝臣 住の江のきしによる波よるさへや 夢のかよひち人めよくらん
素性法師 今こんといひしはかりに長月の 有明の月をまちいてつるかな
文屋康秀 吹からに秋の草木のしほるれは むへ山風をあらしといふらん
大江千里 月みれは千々にものこそかなしけれ 我身ひとつの秋にはあらねと
菅家 この度はぬさも取あへす手向山 もみちのにしき神のまにゝゝ
源宗于朝臣 山里は冬そさひしさ増りける 人めも草もかれぬとおもへは
凡河内躬恒 心あてに折はやおらむ初しもの をきまとはせるしら菊の花
壬生忠岑 有明のつれなく見えし別れより 暁計うきものはなし
坂上是則 朝ほらけ在明の月とみるまてに よし野ゝさとにふれるしら雪
春道列樹 山川に風の懸たるしからみは なかれもあへぬ紅葉なりけり
紀友則            久方の光のとけき春の日に しつ心なくはなの散らん
興藤原風 誰をかも知人にせん高砂の 松も昔の友ならなくに
紀貫之 人はいさ心もしらす古郷は 花そむかしの香ににほひける
清原深養父 夏のよはまたよひなから明ぬるを 雲のいつこに月やとるら
 
                   後撰集 6首
天智天皇 秋の田のかりほの盧のとまをあらみ 我ころも手は露にぬれつゝ
禅丸 是や此行もかへるも別ては しるもしらぬも相坂のせき
陽成院 つくはねのみねよりおつるみなの川 恋そつもりてふちとなりぬる 
三条右大臣        なにしおははあふ坂山のさねかつら 人にしられて来るよしも哉
文屋朝康 しら露に風のふきしく秋のゝは つらぬきとめぬたまそ散ける
参議等 浅ちふのをのゝしの原忍ふれと あまりてなとか人のこひしき
 
                  拾遺集 11首
柿本人丸       あし引の山鳥のおのしたり尾の なかゝゝし夜を独かもねん
元良親王 侘ぬれは今はたおなし難波なる 身をつくしてもあはんとそ思ふ
貞信公 をくら山嶺のもみち葉心あらは 今一度のみゆきまたなん
平兼盛 忍ふれと色に出にけり我こひは ものやおもふとひとのとふまて
壬生忠見 恋すてふ我名はまたき立にけり 人しれすこそおもひそめしか
権仲納言敦忠 あひみての後の心にくらふれは むかしはものをおもはさりけり
中納言朝忠 逢事のたえてしなくは中ゝゝに 人をも身をもうらみさらまし
謙徳公 身の徒になりぬへき いかに久しきものとかはしる
恵慶法師 八重葎しけれる宿のさひしきに 人社見えね秋は来にけり
右大将道綱母      なけきつゝ独ぬるよの明るまは哀ともいふへき人はおもほえて
右近 わすらるゝ身をは思はす誓ひてし 人のいのちのおしくも有かな
 
                  後拾遺集 14首
清原元輔 契きなかたみにそてをしほりつゝ すゑのまつ山波こさしとは
藤原義孝 君かためおしからさりしいのちさへ 永くもかなとおもひけるかな
藤原実方朝臣 かくとたにえやはいふきのさしも草 さしもしらしな燃るおもひを
藤原道信朝臣 明ぬれはくるゝものとは知なから 猶うらめしき朝朗かな
和泉式部 あらさらん此よの外のおもひ出に いま一度のあふ事も哉
大弐三位       有馬山猪名のさゝ原風ふけは いてそよ人をわすれやはする
赤染衛門 やすらはてねなましものをさよ更て 片ふくまての月を見しかな
清少納言 よをこめて鳥のそらねははかるとも 世にあふさかの関はゆるさし
左京大夫道雅 今はたゝおもひたえなんとはかりを 人つてならていふよしも哉
権仲納言匡房 高砂のおのへのさくら咲にけり とやまの霞みたゝすもあらなん
相模 うらみ侘ほさぬ袖たにある物を 恋に朽なむ名こそおしけれ
三条院 心にもあらてうきよになからへは こひしかるへき夜半の月哉
能因法師        あらしふく三室の山のもみちはゝ たつ田の川のにしき成けり
良暹 法師 さひしさに宿をたち出てなかむれは いつくもおなし秋の夕暮
 
             金葉集 5首
小式部内侍 大江山生野ゝみちの遠けれは またふみも見すあまのはしたて
大僧正行尊 もろ共に哀とおもへ山さくら はなより外にしる人もなし
大納言経信 夕されは門田のいなは音つれて 芦のまろやにあき風そふく
祐子内親王家紀伊    音にきくたかしのはまの化波は かけしやそてのぬれもこそすれ
源兼昌 あはち嶋かよふ千鳥の鳴こゑに 幾夜ねさめぬすまのせきもり
 
                    詞花集 5首
源重之 風を痛み岩うつ波のをのれのみ 碎て物をおもふころかな
大中臣能宣朝臣 みかき守ゑしのたく火の夜はもえて ひるは消つゝものをこそおもへ
伊勢大輔 いにしへの奈良のみやこの八重桜 けふこゝのへに匂ひぬるかな
法性寺入道前関白太政大臣 和田の原こき出てみれは久方の 雲井にまかふおきつしら波
崇徳院 瀬をはやみ岩にせかるゝたき川の われてもすゑにあはむとそおもふ
 
                   千載集 15首
大納言公任 瀧の音はたえて久しく成ぬれと 名こそなかれて尚聞えけれ
権中納言定頼 朝朗うちの川霧たえゝゝに 顕はれ渡る瀬ゝのあしろ木
周防内侍 春の夜の夢はかりなる手枕に 甲斐なくたゝん名こそおしけれ
源俊頼朝臣 うかりける人を初瀬の山おろし はけしかれとはいのらぬものを
藤原基俊 契りをきしさせもかつゆをいのちにて 哀ことしの秋もいぬめり
待賢門院堀河 長からん心もしらすくろ髮の みたれて今朝はものをこそ思へ
道因法師 思ひわひさてもいのちは有ものを うきに堪ぬはなみた成けり
後徳大寺左大臣 ほとゝきす鳴つる方を眺むれは 唯有明の月そのこれる
公太后宮大夫俊成    世中よ道こそなけれおもひ入 山のおくにも鹿そ鳴なる
俊恵法師 よもすから物思ふころは明やらて 閨の隙さへつれなかりけり
西行法師 歎けとて月やはものを思はする かこち顔なるわかなみたかな
皇嘉門院別当 難波江のあしのかりねの一夜ゆへ 身をつくしてやこひ渡るへき
殷富門院大輔 見せはやなをしまのあまの袖たにも ぬれにそぬれし色はかはらす
二条院讃岐 わか袖はしほひに見えぬおきの石の 人こそしらねかはくまもなし
前大僧正慈円 おほけなくうきよの民におほふ哉 我たつ杣にすみそめの袖
 
                  新古今集 14首
持統天皇 春過て夏来にけらし白妙の 衣ほすてふあまの香来山
山辺赤人 田子のうらにうち出てみれはしろ妙の 不二の高根にゆきは降つゝ
中納言家持 鵲の渡せるはしにをく霜の しろきをみれはよそ更にける
伊勢 なには潟みちかきあしのふしのまも あはてこのよを過してよとや
中納言兼輔 みかの原わきてなかるゝ和泉川 いつみきとてか恋しかるらん
曾禰好忠 ゆらのとを渡る舟人かちを絶 行ゑもしらぬこひのみち哉
儀同三司母 わすれしの行すゑまては難けれは けふをかきりのいのちとも哉
紫式部 めくりあひてみしやそれとも分ぬまに 雲かくれにしよはの月哉
左京大夫顕輔 秋風に棚引雲のたえまより もれいつる月のかけのさやけさ
藤原清輔朝臣 なからへはまたこの比や忍はれん うしと見しよそいまはこひしき
寂連法師 村雨の露もまたひぬ槇のはに 霧たちのほるあきのゆふ暮
式子内親王 玉のをよ絶なはたえねなからへは しのふる事のよはりもそする
後京極摂政前太政大臣   きりゝゝす鳴やしもよのさむしろに ころもかたしきひとりかもねん 
参議雅経 みよし野ゝ山の秋風さよ更て 故郷さむくころもうつ也
 
                   新勅撰集 4首
鎌倉右大臣 世中は常にもかもな渚こく 海人のをふねの綱手かなしも
入道前太政大臣     花さそふあらしの庭の雪ならて ふり行ものはわか身成けり
権中納言定家       ぬ人をまつほのうらの夕なきに やくや藻しほの身もこかれつゝ 
後二位家隆 風そよくならの小川の夕暮は 御秡そなつのしるし成ける
 
                    続後撰集 2首
後鳥羽院 人もおしひともうらめしあちきなく よをおもふゆへに物思ふ身は 
順徳院          百敷やふるき軒端の忍ふにも なを餘りあるむかし成けり

 
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